偏差値の求め方
偏差値はどのような計算をして求めるのかを、例をあげて説明しようと思います。
ただし,小学生にもわかるように,マイナスになる計算をしないように工夫してあります。
計算がしやすいように,10人の生徒が100点満点のテストを受けたことにします。
氏名 | A | B | C | D | E | F | G | H | I | J |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 50 | 90 | 60 | 60 | 40 | 100 | 40 | 40 | 50 | 70 |
偏差値を求めるためには,平均点・分散・標準偏差を求める必要があります。
平均点については,求め方をよく知っていますね。
分散・標準偏差というのは,聞き慣れないことばだと思いますが,求め方はそれほどむずかしくありません。
1.平均点を求める
平均点は,得点をすべて足して,人数で割れば求められます。
(50+90+60+60+40+100+40+40+50+70)÷10=60
となるので,平均点は60点です。
氏名 | A | B | C | D | E | F | G | H | I | J |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 50 | 90 | 60 | 60 | 40 | 100 | 40 | 40 | 50 | 70 |
2.平均点との差を求める
たとえばAさんの場合は,得点が50点ですから,平均点である60点との差は,60-50=10点 です。
Bさんの場合は,得点が90点ですから,平均点である60点との差は,90-60=30点 です。
このように計算すると,次のような表ができ上がります。
氏名 | A | B | C | D | E | F | G | H | I | J |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 50 | 90 | 60 | 60 | 40 | 100 | 40 | 40 | 50 | 70 |
平均点 との差 | 10 | 30 | 0 | 0 | 20 | 40 | 20 | 20 | 10 | 10 |
3.平均点との差の平方数を求める
平方数というのは,たとえば7の平方数なら,7×7=49,12の平方数なら,12×12=144 です。
このように,同じ数×同じ数,の計算をしたのが,平方数です。
たとえばAさんの場合は,平均点との差は10点ですから,その平方数は,10×10=100 です。
Bさんの場合は,平均点との差は30点ですから,その平方数は,30×30=900 です。
このように計算すると,次のような表ができ上がります。
氏名 | A | B | C | D | E | F | G | H | I | J |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 50 | 90 | 60 | 60 | 40 | 100 | 40 | 40 | 50 | 70 |
平均点 との差 | 10 | 30 | 0 | 0 | 20 | 40 | 20 | 20 | 10 | 10 |
の平方数 | 100 | 900 | 0 | 0 | 400 | 1600 | 400 | 400 | 100 | 100 |
4.分散を求める
「分散」というと,何やらむずかしい計算が必要だというイメージを持つかも知れません。
しかし実際は簡単。先ほど「平均点との差の平方数」を求めましたね。(クリーム色の部分)
「分散」とは,このクリーム色の部分の,平均を求めるだけです。
(100+900+0+0+400+1600+400+400+100+100)÷10=400
「分散」は,400になります。
氏名 | A | B | C | D | E | F | G | H | I | J |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 50 | 90 | 60 | 60 | 40 | 100 | 40 | 40 | 50 | 70 |
平均点 との差 | 10 | 30 | 0 | 0 | 20 | 40 | 20 | 20 | 10 | 10 |
の平方数 | 100 | 900 | 0 | 0 | 400 | 1600 | 400 | 400 | 100 | 100 |
5.標準偏差を求める
またまた耳慣れないことばが出てきました。「ひょうじゅんへんさ」と読みます。
標準偏差を計算できるようになるためには,「平方根(へいほうこん)」の考え方を理解する必要があります。
平方根は,先ほど出てきた「平方数」の逆です。
たとえば7の平方数は,7×7=49 でした。
よって,49の平方根は,7になります。
同じようにして,144の平方根は,144=12×12 ですから,12になります。
電卓で,144と押して,√(ルート)を押すと,12になります。これが,平方根です。
では,標準偏差について説明しましょう。
標準偏差は,分散の平方根です。
先ほど,分散は400であることがわかりました。
400=20×20 ですから,標準偏差は20になります。
氏名 | A | B | C | D | E | F | G | H | I | J |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 50 | 90 | 60 | 60 | 40 | 100 | 40 | 40 | 50 | 70 |
平均点 との差 | 10 | 30 | 0 | 0 | 20 | 40 | 20 | 20 | 10 | 10 |
の平方数 | 100 | 900 | 0 | 0 | 400 | 1600 | 400 | 400 | 100 | 100 |
標準偏差は,得点の散らばり具合を表す数値です。
もしみんなが全く同じ得点だったら,たとえば10人がすべて50点だったら,平均点はもちろん50点で,標準偏差は0です。
ところが10人のうち5人が0点,5人が100点だったら,平均点はやはり50点ですが,標準偏差は50になってしまいます。
6.平均点との差に10をかけ標準偏差で割る
たとえばAは平均点との差は10でした。これに10をかけ,標準偏差である20でわると,10×10÷20=5 となります。
Bは平均点との差は30でした。これに10をかけ,標準偏差である20でわると,30×10÷20=15 となります。
氏名 | A | B | C | D | E | F | G | H | I | J |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 50 | 90 | 60 | 60 | 40 | 100 | 40 | 40 | 50 | 70 |
平均点 との差 | 10 | 30 | 0 | 0 | 20 | 40 | 20 | 20 | 10 | 10 |
に10をかけ, 標準偏差で割る | 5 | 15 | 0 | 0 | 10 | 20 | 10 | 10 | 5 | 5 |
7.偏差値を求める
いよいよ偏差値を求めるときがきました!
偏差値を求める準備は,もう十分できています。
先ほど,「平均点との差に10をかけ,標準偏差で割る」ことをしましたね。
※得点が平均点より高ければ,50にこの数を足す。
※得点が平均点と同じであれば,偏差値は50である。
※得点が平均点よりも低ければ,50からこの数をひく。
たとえばAは得点が50点で,平均点よりも低いです。
よって,50から5を引いて,50-5=45 となります。
Bは得点が90点で,平均点よりも高いです。
よって,50に15を加えて,50+15=65 となります。
氏名 | A | B | C | D | E | F | G | H | I | J |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 50 | 90 | 60 | 60 | 40 | 100 | 40 | 40 | 50 | 70 |
平均点 との差 | 10 | 30 | 0 | 0 | 20 | 40 | 20 | 20 | 10 | 10 |
に10をかけ, 標準偏差で割る | 5 | 15 | 0 | 0 | 10 | 20 | 10 | 10 | 5 | 5 |
偏差値 | 45 | 65 | 50 | 50 | 40 | 70 | 40 | 40 | 45 | 55 |
以上で偏差値の求め方はオシマイです。
追記1.偏差値はアテになるか
偏差値とは,その集団の中でどれくらいの位置にいるかを表した数値です。
偏差値の利用価値が高いのは,その集団の数値分布が正規分布に近い状態のときです。
正規分布の場合だと,偏差値60以上の生徒は全体の16%ぐらい。偏差値40以下も全体の16%ぐらい。
偏差値70以上の生徒は全体の2%ぐらい。偏差値30以下も,全体の2%ぐらい。
偏差値80以上の生徒は全体の0.13%(700人中1人)ぐらい。偏差値20以下も,全体の0.13%ぐらい。
入学試験や模擬試験は,正規分布とはかけ離れた分布になっていることが多いので,偏差値を何ら疑わず信じてはいけません。
集団の中での位置が,ある程度わかるものとして利用すべきものですから,偏差値が1上がった・1下がったからといって,一喜一憂するのは無意味です。
追記2.偏差値は最高いくらまであるの?
理論上は,どんな偏差値もとることはできます。
たとえば自分が100点で,自分以外の25人がみな0点なら,自分の偏差値は100になります。(このとき,自分以外の人の偏差値は48です。)
また,自分が100点で,自分以外の9025人がみな0点なら,自分の偏差値は1000になります!!
一般的に,自分が100点で,自分以外の n 人が0点なら,自分の偏差値は,「10×sqrt(n) + 50」という式で表すことができます。ただし,sqrt(n)は n の平方根です。
このとき,自分以外の人の偏差値は,「50-10/sqrt(n)」という式で表すことができます。
追記3.偏差値でだいたいの順位がわかる
成績が正規分布であると仮定すると,理論的には偏差値がわかれば順位を計算することができます。
下の表は,偏差値によって,上位何%の成績なのかがわかる対応表です。
たとえば,偏差値60ならば,上位16%の成績であることがわかりますから,もし8000人が受けたテストの場合ならば,
順位が 8000×0.16=1280(位),ということになります。
表を見ると,偏差値60から偏差値70に上げることが大変むずかしいことがわかります。
なんせ上位100人中16位の成績だったのを,100人中2位の成績にしなければならないのですから…。
偏差値 | 上位何%か |
80 | 0.1% |
79 | 0.2% |
78 | 0.3% |
77 | 0.3% |
76 | 0.5% |
75 | 0.6% |
74 | 0.8% |
73 | 1.1% |
72 | 1.4% |
71 | 2% |
70 | 2% |
69 | 3% |
68 | 4% |
67 | 4% |
66 | 5% |
65 | 7% |
64 | 8% |
63 | 10% |
62 | 12% |
61 | 14% |
60 | 16% |
59 | 18% |
58 | 21% |
57 | 24% |
56 | 27% |
55 | 31% |
54 | 34% |
53 | 38% |
52 | 42% |
51 | 46% |
50 | 50% |
49 | 54% |
48 | 58% |
47 | 62% |
46 | 66% |
45 | 69% |
44 | 73% |
43 | 76% |
42 | 79% |
41 | 82% |
40 | 84% |
39 | 86% |
38 | 88% |
37 | 90% |
36 | 92% |
35 | 93% |
34 | 95% |
33 | 96% |
32 | 96% |
31 | 97% |
30 | 98% |
29 | 98% |
28 | 98.6% |
27 | 98.9% |
26 | 99.2% |
25 | 99.4% |
24 | 99.5% |
23 | 99.7% |
22 | 99.7% |
21 | 99.8% |
20 | 99.9% |